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10. 「すざく」に固有な FTOOLS (Suzaku FTOOLS )

ここでは、「すざく」の解析に固有かつ重要な FTOOLS を紹介する。


10.1 xisrmfgen

XISのエネルギー分解能、gainなどは、 観測時期・観測モード・CCD上のイベントの位置などによって異なる。 従って、XISのchannel波高値(PHA)とエネルギー(E)との対応づけが必要である。 生の PHA から gain を 3.65 eV/ch に揃えた PI (Pulse Invariant)への変換は、 xispiという critical ftools によってユーザーに渡る Second Fits File の時点ですでに補整されている。 この PI と E との関係は rmf で記述されており(§3.4.2参照)、 あるエネルギー E の光子が入射したときのPIの分布を行列としておさめられている。 xisrmfgenは、xselect で作成したスペクトルファイルに対応する rmf file を 作成してくれるftoolsである。ここでは最も簡単な使い方の例を説明する。詳しくは
> fhelp xisrmfgen
を参照してほしい。

  1. 準備するもの
    .pha file (スペクトルファイル: ここではtmp.phaとする)
    CALDBの設定 (§A参照)
  2. 生成されるもの
    .rmf file (レスポンスファイル: ここではtmp.rmfとする)
  3. 使用方法
    > xisrmfgen phafile=tmp.pha outfile=tmp.rmf
    


10.2 xissimarfgen

天体からのX線のフラックスを正確に求めるには、 正確な(望遠鏡を含む)検出器の有効面積(arf)が必要である。 XIS の場合、XIS/HXD nominal position で観測された点源については、 CALDB で arf が公開されている。 しかし、 などの理由から、自分の解析しようとする天体にあわせて arf を計算した方が 良い場合が多い。キャリブレーション情報をもとに、モンテカルロ計算を行なっ て arf を求める tool が xissimarfgen であり、ここではその使い方を 簡単に解説する。 xissimarfgen は、HEADAS 6.1.1 以降には正式に HEADAS に含まれている。 すでにかなりのパラメタがCALDBやスペクトルファイルから 自動で読み込まれるようなっているので、 CALDB を正しくインストールしておかなければならない。

なお、xissimarfgen を使おうと思う人は、 Ishisaki et al. 2007, PASJ, 59, S113 を必ず参照すること。 また、各パラメタの意味については

unix> fhelp xissimargen
で確認して欲しい。 参考のため、以下に簡単な arf 計算の計算例を紹介しておく。

その1 : 点源のスペクトルをSKY座標で積分した場合の arf
点源のSky座標を (SKY, SKY) = (700, 800)とし、 そのスペクトルを (SKYX, SKYY) = (700, 800) を中心に、 半径 115 pixel (約 2 arcmin)で積分した場合のXIS1 の arf (source_xis1.arf)を作る。 積分領域ファイル(source_xis1.reg10.1) スペクトルファイル(source_xis1.pi),レスポンスファイル(source_xis1.rmf), GTIファイル(source_xis1.gti, GTI extensionのついたイベントファイルでも良い) 10.2, attitudeファイル(配付データの auxil/ 以下にある。とりあえず source.att とする)を用意する。

ここで xissimarfgen で使う座標には、bin まとめしていない状態のイメージの座標を指定しなくてはいけないことに注意が必要である。XSELECT 中でデフォルトでは、XIS のイメージは 8 binまとめされているため、そこで作ったイメージから座標を決めると、 xissimarfgen では座標や半径などの値が正しい値の 1/8 になってしまうのである。 正しくは例えば XSELECT 中で set xybinsize 1 と打ってイメージの bin サイズを変更し、 その後 extract して作ったイメージで座標を決めればよい。

以上のファイルの準備ができたら以下のように実行する。

unix> xissimarfgen \
      instrume=XIS1 source_mode=SKYXY pointing=AUTO source_x=700 source_y=800           \
      num_region=1 region_mode=SKYREG regfile1=source_xis1.reg arffile1=source_xis1.arf \ 
      limit_mode=MIXED num_photon=100000 accuracy=0.005 phafile=source_xis1.pi          \
      detmask=/CALDB/data/suzaku/xis/bcf/ae_xi1_calmask_20051105.fits                   \
      gtifile=source_xis1.gti attitude=source.att rmffile=source_xis1.rmf estepfile=default

その2 : 一様な輝度分布の広がった天体に対する arf
天体の大きさを半径 20 arcminの円とし、明るさは一様とする。 2通りの積分領域で XIS2 の arf を作るとする。 出力される arf は天体全体のフラックスを求めることが出来るように規格化さ れているので、積分領域に比べて天体が大きい場合には注意すること。

unix> xissimarfgen instrume=XIS2 pointing=AUTO source_mode=UNIFORM source_rmin=0            \
      source_rmax=20 num_region=2 region_mode=SKYREG                                        \
      regfile1=source_xis2_a.reg arffile1=source_xis2_a.arf                                 \
      regfile2=source_xis2_b.reg arffile2=source_xis2_b.arf                                 \
      limit_mode=MIXED num_photon=1000000 accuracy=0.005 phafile= source_xis2.pi            \ 
      detmask=/CALDB/data/suzaku/xis/bcf/ae_xi2_calmask_20051105.fits                       \
      gtifile=source_xis2.gti attitude=source.att rmffile=source_xis2.rmf estepfile=medium

ここで estepfile はどの位細かいエネルギーステップでarfの計算を行なうかを表わす パラメタであり、full, dense, medium, sparse の 4 通りが用意されている。 まず最初に、比較的はやく計算が終了する estepfile=sparse で設定などの確認を行なってから、好みの estepfile で計算することを勧める。

特に自分で指定をしないかぎり、 xissimarfgenでは contamination 考慮した arf が作られる。 このとき、最新のHEADASとCALDBを正しくインストールしてあれば、 最新の contamination 情報がCALDBから読みだされる 10.3。 もし、この影響を考慮しない arf を作りたいのであれば、 contamifile=none と設定する必要がある。 また、ここでファイル名を直接指定すれば、 古い(とはかぎらないが...)バージョンの contamination情報をもとに arf を作ることも可能である。

Source の位置、積分領域の位置が適切かどうかを確認するには、 ds9 で arfの最初のextenstionに入っているイメージを見ることが 非常に有効である。


10.3 xiscontamicalc

XIS の Contamination を含んでいない arf がすでにあるときには 10.4 、 xissimarfgen によって Contamination を含んだ arf を作りなおさなくても、 xiscontamicalc を使えば比較的簡単に contamination の評価が出来る。 xiscontamicalc には、以下に示すような2通りの使い方がある。

その1 : XSPECで使う補正因子を計算する
以下の [ ] の部分に対して、自分の観測に対応したパラメタを入力する。

unix> xiscontamicalc
xiscontamicalc version 2006-11-26
Written by Y.ISHISAKI (TMU)
Built on ANL HEADAS converter 1.71 for ANL version 1.72
Instrument Name (XIS0,XIS1,XIS2,XIS3)[XIS0] 
Suzaku TIME, or date string in UTC, 'yyyy-mm-ddThh:mm:ss.sss'[2006-03-01T00:00:00]
X-ray energy in keV[1]
incident X-ray DETX position[310]
incident X-ray DETY position[512.5] 
ARF file name to multiply the transmission[none]
以下の様な出力が出る。 XSPEC で スペクトルフィッテングを行なう際に、vphabs を使って、 C(CARBON) と O(OXYGEN)の吸収量を補正すれば良い。

xis_contami: reading '/inst/soft/caldb//data/suzaku/xis/bcf/ae_xi0_contami_20061016.fits' ...
   ngp=522, t0=177242000.0, t1=492342800.0, nen=7900, e0=0.201, e1=15.999

TELESCOP = 'SUZAKU'
INSTRUME = 'XIS0'
CONTAMIFILE = '/inst/soft/caldb//data/suzaku/xis/bcf/ae_xi0_contami_20061016.fits' (CALDB)
LEAPFILE = '/inst/soft/caldb//data/gen/bcf/leapsec_010905.fits' (CALDB)
DATE-OBS = '2006-03-01T00:00:00' ( TIME = 194486401.000000 )
DAYS = 199.588 [dy] after 2005-08-13T09:53:20
ENERGY = 1.000 [keV]
R_OFFSET = 3.517 [arcmin] at ( DETX , DETY ) = ( 310.0 , 512.5 ) [pixel]
CARBON = 1.877231 [10**18 cm**-2]
OXYGEN = 0.312872 [10**18 cm**-2]
TRANSMIS = 8.843071e-01

その2 : arf を 補正する
上の例の入力の最後の行で、Contamination を含んでいない arf を入力する。

ARF file name to multiply the transmission[none] source_nocontami.arf
scale column density of contaminant from nomincal value?[no]
これで、入力した arf に対して、補正が行なわれる 10.5


10.4 xissimを用いたexposure map 作成

xissimは、XIS imageなどのシミュレーションを行なうことができる ftoolsである。 例えば以下のような場合、xissimは有用である。 拡がった天体のイメージを描きたい時、 視野中心と視野の端ではvignettingの影響で実効的なexposureは異なるため、 生イメージでは正しい強度mapにはなっていない。 そこで、xissimを用いて視野内のexposureのmapを作成することで、 イメージのexposure補正をすることが可能である。 ここでは、xissimを用いたXIS0, 2.0 keVでのexposure mapの作り方を紹介する。

0. 必要な物
元のimage fits: input.img
オイラー角情報: (=ea1, ea2, ea3)
オイラー角情報は、イベントファイルにも書いてあるので、 fdumpなどで調べよう。
レスポンスファイル: (ここではxis0.rmf)

1. 空が一様に光っているimage fitsを用意
元のimage fitsをinput.img、一様な空image fitsをflatinput.imgとする。

fcarith infile="input.img" const="0" outfil="tmp.img" ops="*"
fcarith infile="tmp.img" const="1" outfil="flatinput.img" ops="+"
これで全ピクセルに1が入ったimage fitsが作成された。

2. 2 keVのphoton listを作成

mkphlist photon_flux=1 flux_emin=1.0 flux_emax=10.0 \
spec_mode=1 image_mode=0 time_mode=0 limit_mode=0 \
fits_image_file=flatinput.img nphoton=200000000 \
energy=2.0 outfile=flat_2keV.pht
mkphlistとは、xissimのためのphoton listを作成するftoolである。 詳しくは
>fhelp mkphlist
で勉強してほしい。

3. photon listのイベントを空image fitsに降らせてイベントファイルを作成

xissim instrume=XIS0 
infile1=flat_2keV.pht infile2=none \
ea1=999.9 ea2=999.9 ea3=999.9 \ 
xis_rmffile=xis0.rmf \ 
outfile=flat.evt

4. xselectなどでimage fitsを作成
5章などを参照して、image fitsを作る。 これがexposure mapと等価である。 絶対値は違うことに注意すること。

なお、2008年3月現在、 xisexpmapgenというFTOOLSがリリースされている。 これは、exposure mapをdirectに作ってくれるツールである。


10.5 hxdarfgen

HEADAS 6.0.6 以降には HXD の arf file を作成する hxdarfgen なる ftools が 含まれている。これは、HXD nominal position のレスポンスに対して用いる arf を作成 するツールである。(XIS nominal position のレスポンスに対して用いてはダメ)

正確な表現をするならば、HXD のエネルギー応答関数は、入射角度が変わると、 パルスハイト分布(rmf)の形自体が変わるので、 rmf $\times$ arf という体系では表現しきれないものであるが、 第零近似として、arf を用いた解析が行なえるようになっている。 HXD の arf/rmf は、通常の X線望遠鏡(arf) $\rightarrow$ 焦点面検出器(rmf) という 切り分けは行なっておらず、HXD nominal position の時に arf の全ての成分が 1.0 となる ように定義されている。すなわち、HXD arf は、HXD nominal position のレスポンスからの 補正項として定義されている。

hxdarfgen の詳細な使い方は、

unix $  fhelp hxdarfgen
の記述をよく読んでほしい。

ae101005040_hxd_pin.pha という PIN の PI file を用いていて、 (RA, DEC) = (274.0554, 49.8675) の天体に対する PIN の arf が欲しい場合は、

unix $ hxdarfgen hxd_arf_pinid=64 hxd_arf_gsoid=17 \
                 teldef_name="ae_hxd_teldef_20060516.fits" \
                 attitude_name="ae101005040.att" \
                 hxd_arfdb_name="ae_hxd_pinart_20051126.fits" \
                 input_pi_name="ae101005040_hxd_pin.pha" \
                 point_ra=274.0554 point_dec=49.8675
とすればよい。ここで hxd_arf_pinid=64 なら PIN-0,1,2,...63 全てをマージしたものである。 PIN arf を作成する場合は、hxd_arf_gsoidを 16 より大きい値にする必要がある。 衛星の向いていた RA, DEC は、PI file のヘッダに書かれている 'RA_NOM' 'DEC_NOM' から 読まれる10.6。また、 ae101005040_hxd_gso.pha という GSO の PI file に対する GSO の arf が欲しい場合は、
unix $ hxdarfgen hxd_arf_pinid=65 hxd_arf_gsoid=16 \
                 teldef_name="ae_hxd_teldef_20060516.fits" \
                 attitude_name="ae101005040.att" \
                 hxd_arfdb_name="ae_hxd_gsoart_20051126.fits" \
                 input_pi_name="ae101005040_hxd_gso.pha" \
                 point_ra=274.0554 point_dec=49.8675
とすれば生成される。ここで、CALDB 中の arf data base の名前 (hxd_arfdb_name) は、
     PIN なら ae_hxd_pinart_xxxxxxxx.fits、
     GSO なら ae_hxd_gsoart_xxxxxxxx.fits
としないと正常に動作しないので注意が必要である。
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平成21年8月20日