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6. ds9

ds9とは、 FITSイメージやbinary tableなどを可視化することを大きな目的とした ソフトウェアで、 天文学ではミッションを問わず広く用いられている。 ここでは、「すざく」の解析で用いそうな ds9テクニックを紹介する。 なお、ds9の詳細なマニュアルは、

http://hea-www.harvard.edu/RD/ds9/

を参照してほしい。

6.1 ds9で出来ること (What can ds9 do ?)

ds9で出来ることは、主に以下の通りである。

  1. FITSを可視化する
    event FITS, image FITSを可視化する。この目的で使うケースが一番多い。 イメージは、linear/logスケール、カラーマップを調整することが出来たり、 座標や領域などを書き込むことが出来る。 出来たイメージをps, jpegにすることも出来る。
  2. 領域(region)を作成する
    スペクトル解析などに用いる領域(region file)を作成、保存する。

6.2 ds9のwindow (Window of ds9)

ds9では、図 6.1のような画面が立ち上がる。 この画面を本マニュアルではmain windowと呼ぶ。 画面上部にはファイル名・マウスのいる位置の座標などが、 下部には実際の画像がある。 最上部にあるボタンをクリックしながら、 コマンドを実行していく。 よく使用されるコマンドは画面中程にもある。

図 6.1: ds9のwindow。
\includegraphics[width=0.3\textwidth]{figs/ds9_zentai.ps}

6.3 ds9 一通りの使い方 (how to use ds9)

6.3.1 ds9を立ち上げる (Start up ds9)

ds9を立ち上げる時は、

$ ds9 (infile)
とする。 または、
$ ds9
としたあと、file → openとボタンをクリックし、infileを入力する。 ここで、infileに出来るのは、 event FITSまたはimage FITSである。

6.3.2 イメージを自分好みに調整する (Adjusting images as you like)

    binning (event fileの場合のみ)

    入力ファイルがevent file形式の場合は、 イメージのbinningが出来る。 特に、表面輝度の暗い広がった天体のイメージを見る時は binningが効果的である。
    Bin → block xx
    の順にクリックすると、イメージがxx binごとにbinningされる。 例えば、図 6.2左を32binまとめすると、 図 6.2中央のようになる。 また、smoothをクリックすると、画像が指定したbin sizeで smoothingされる。 smoothingの方法は、 boxcar, tophat, gaussianから選択出来る。 図 6.2右は、同図中央をgaussianでsmoothingした例である。

    なお、ds9の描画画面はdefaultでは1024x1024 pixelである。 そのため、ほとんどbinningをしない大きなイメージを見たければ、
    Bin → 4096x4096
    などと、画像サイズを変える必要がある。

    図 6.2: 左: binningしていない画像。中央: 32binまとめした画像。 右: さらにgaussianでsmoothingした画像。
    \includegraphics[width=0.3\textwidth]{figs/ds9_1bin.ps} \includegraphics[width=0.3\textwidth]{figs/ds9_32bin.ps} \includegraphics[width=0.3\textwidth]{figs/ds9_32bin_smo.ps}

    zoom in, zoom outする

    画像のzoom in, outを行なう。
    Zoom → (in or out)
    と順にクリックすればよい。

    scalingを変える

    画像が見やすいよう、scalingを変える。
    Scale → (linear)
    などとして、scaleを変えることが出来る。 ()内は、linear, log, squared, squared rootから選択できる。 scalingの最小・最大値は、defaultでは、 データ点の最小・最大値になっている。 これを変更したい場合は、
    Scale → Scale parameter
    とクリックすると、 パラメータ設定用のwindowが開くので、 そこで調節する。

    カラーを調整する

    画像のグラデーションを変え、調節する。
    Color → (gray)
    などとすると、様々なグラデーションに変更することが出来る。 gray scale、 b (青から赤、黄へと変わるグラデーション)、 bb (茶系のグラデーション)などがよく使われる。 右クリックしながら画面上をぐりぐりドラッグすると、 コントラストなどを変えることも出来る。 コントラストを反転させたい時は、
    Color → Invert
    とすればよい。

    領域(region)を書く

    領域 (以下region)とは、 画面上に書き込める幾何学図形や直線、文字などを指す。 window真ん中にあるボタンからたどる時は
    Region → more → ... 、
    window上のボタンからたどる時は
    Region → shape → ...
    とクリックし、好みの形のregionを選ぶ。 右クリック→ドラッグで、好みの大きさのregionが描ける。 出て来たregionをクリックすると、4角に四角い点が現われるので、 これをクリック-ドラッグすることで大きさ・位置を調整できる。

    さらに大きさや位置、色などの調整をしたい時は、 regionをダブルクリックして、図 6.3のようなsub windowを出す。 ここで図形の中心座標や大きさなどを任意に変えることが出来る。 defaultではphysical座標指定になっているが、
    Coord → WCS
    Radius → WCS
    などとクリックすることで、sky座標での指定も可能である。 regionの色や太さは、
    Color/Width → ...
    などとクリックして指定する。

    複数のregionを組み合わせて一つのregionにすることも可能である。 その際、sub windowメニューで
    Property → exclude
    を選ぶと、その領域をくり抜くことが出来る。 くり抜き指定が入った領域は、画面上では赤の斜線が入る。

    図 6.3: 左: regionを書いた一例。右: regionパラメータを指定するwindowの例。
    \includegraphics[width=0.45\textwidth]{figs/ds9_region.ps} \includegraphics[width=0.4\textwidth]{figs/ds9_region_para.ps}

    出来上がったregionは、 main window上で
    Region → Save
    とすることでテキストファイルとして保存できる。 同様に
    Region → Load
    で保存したregion fileを読み出すことも可能である。

    region fileはテキストファイルなので、 editorを使って編集することが可能である。 例えば、

    circle(64.5,64.5,46.875)
    -circle(64.5,64.5,31.25)
    
    というregion fileは、 半径46.875pixの円から半径31.25pixの円をくり抜いたものになる。

    なお、スペクトル解析のためのregion fileの保存の際の注意事項に関しては、 6.3.3節に改めてまとめる。

    座標を書く

    様々な座標軸を画面上に書きたい時は、
    Analysis → Display Coordinate Grid
    の順にクリックすると、 画面上に座標を書くことが出来る。 図 6.4左は、 ds9上で実際にJ2000座標が書かれたところである。 座標の種類や色などを指定したい時は、
    Analysis → Coordinate Grid Parameters ...
    とすると、図 6.4右のような座標用のwindowが立ち上がる。 座標システムや軸間隔ををdefault以外にしたい時は
    Coordinate → (目的の座標システム)
    Coordinate → (目的の座標間隔)
    とする。 座標軸などの色や太さなどの変更方法は、regionの場合と同じである。

    図 6.4: 左: 座標を引いた一例。右: 座標づけパラメータを指定するwindow。
    \includegraphics[width=0.45\textwidth]{figs/ds9_coordinate.ps} \includegraphics[width=0.4\textwidth]{figs/ds9_coordinate_para.ps}

    座標は、検出器の座標系、sky座標共にこのコマンドで引くことが出来る。 しかし、sky座標情報の入っていないFITS (例えば、detector座標で作成されたimage FITS)の場合は、 sky座標を書くことは出来ない。

    contourを書く

    Analysis → Display Contours
    とすると、図 6.5左のように等高線を引くことが出来る。 等高線の本数、scaling、smoothingなどを調整したい時は、
    Analysis → Contours Parameters ...
    をクリックし、図 6.5右のwindowを立ち上げる。 このwindowの中で、Ccontour Levelsは等高線の本数、 Contour Smoothnessは、smoothingをかけるbin数である。 また、等高線を引く最小値・最大値はLimitsを書き換えることで変更できる。 等高線間隔をlogスケールなどに変更するには、このwindowのScaleをクリックし、 希望のスケールを選ぶ。 contourの色や太さの変更方法は、regionの場合と同じである。 調節が終ったら、 Generate ボタンをクリックした後 Apply ボタンを押すと 等高線が書ける。

    図 6.5: 左: 等高線を引いた一例。右: 等高線パラメータを指定するwindow。
    \includegraphics[width=0.4\textwidth]{figs/ds9_contour.ps} \includegraphics[width=0.4\textwidth]{figs/ds9_contour_para.ps}

    等高線のパラメータは、 contour window上で
    File → Save Contours ...
    とすると、テキストファイルにセーブしておける。 同様に
    File → Load Contours ...
    で、セーブしておいたcountour fileをロード出来る。

    豆知識: 等高線だけのイメージを作成したい時は、 カラーをぐりぐりして、真っ白にしてしまえばよい。


6.3.3 スペクトル作成用のregionを作成する (Make regions for spectral analysis)

XISのスペクトルを作る時は、XSELECT上でregion filterをかけることは 5.4.1節にまとめられている。 ここでは、スペクトル作成の際のregion file formatの注意事項をまとめておく。

  1. sky座標でregionを作成したい場合
    sky 座標は文字どおり、天球上に定義された座標(赤経、赤緯)である。 したがって、sky座標でregionを作るのは、
    ・ 複数観測した時のデータを合わせたい時
    ・ 他の衛星のデータ、論文の座標などと合わせたい時
    に便利である。 このような場合は、
    Region → File Format → DS9/Funtools
    Region → Region Coordinate System → WCS
    Region → Region Coordinate System → (好きなsky座標)
    としてセーブし、regionを作成する。
  2. physical座標でregionを作成したい場合
    physical 座標は、作成したイメージ上に定義された座標である。 検出器イメージを作れば、ある physical 座標は、ある検出器上の位置に 対応する。したがって、physical座標でregionを作るのは、
    ・backgroundをCCDの同じ位置から取りたい時
    などに便利である。 この場合は、
    Region → Region Format → DS9/Funtools
    Region → Region Coordinate System → Image
    Bin → block 8
    としてregionを作成する。 ここで注意しなければいけないのは、
    !! イメージのbinningを XSELECT上の set xybinsizeで決められているものと同じにする !! ことである。 defaultでは、xybinsize = 8となっている。

6.3.4 画像を保存・印刷する (Saving and printing images)

出来た画像を保存する時は、
File → Save Images as ...
とクリックし、好みのフォーマットをクリックすれば良い。 保存できるフォーマットは、 FITS, jpeg, TIFF, PNG, PPM, MPEG。

PS fileに落としたければ、
File → Print
で出て来るsub windowで、"Print To file"を選べばよい。 ここでPrinterを選べば、printerに出力される。

6.3.5 ds9の終了 (Shut down of ds9)

ds9を終了するには、
File → exit
の順にクリックする。
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平成21年8月20日